木に座って本を読んでいる男性。
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5つの柱の哲学

バランスークナイプ流の心地よい暮らし方

仕事、日常生活、数えきれない期待や要求——そして、ほっとひと息つく時間はほんのわずか。多くの人にとって、忙しい毎日の中で“リラックス”は不足しがちです。

けれども、よりバランスよく、丁寧に生きることは、実はそれほど難しくありません——少なくともセバスチャン・クナイプはそう考えていました。

クナイプにとって、充実した健康的な人生を送るための鍵は、何よりも “正しい生活リズム” にありました。彼のモットーは「すべてはそのときに、すべてはほどほどに」。

では、クナイプが考える“バランス”とは、彼の言う“生活の秩序”とは、一体どんなものだったのでしょうか?

クナイプが生きた時代の日常は、今の私たちとは大きく異なっていました。

当時、人々の暮らしは生活のために働くことと強く結びついており、産業革命の初期には技術的な補助もほとんどないため、肉体労働は非常に過酷なものでした。

そのため、意識的に休息をとることや、ましてや“マインドフルネス”や“セルフケア”といった概念について考える人はほとんどいませんでした。

それでもクナイプは、賢い暮らし方の大切さを強調することをやめませんでした。なぜなら彼は、健康な体(とりわけ、当時の勤労者にとっては生活の基盤とも言えるもの)と心の安定は、バランスのとれた生き方によってこそ得られると強く信じていたからです。

合理的に生きなさい。そして、体が出せる以上のものを求めて、みずからに無理をさせてはいけません。つまり――自分自身に対して不合理にふるまってはならないのです。

セバスチャン・クナイプ神父
Sebastian Kneipp

「人はこう生きるべき」クナイプが考える暮らし方とは

クナイプの著作『This is how you should live(こう生きるべき)』によれば、まず大切なのは できる限り“秩序ある生活”を送ることだとされています。ここで彼が言う“秩序”とは、主に 仕事以外のところに自分なりの人生の目的を持つことを意味していました。

同時に、食事についても「どんな食べ物を選ぶかだけでなく、食べるタイミングも大切」であり、無理のない、理にかなった食べ方を心がけるべきだと言います。

さらに、新鮮な空気と適度な運動を日常的に取り入れることも欠かせません。クナイプにとって、それらは食べ物と同じくらい、健やかな生活にとって重要な要素でした。

そしてもし病気になってしまったときには、彼は自身のフィトセラピー(植物療法)を勧めています。それは、「慈悲深い神が自然の中に授けてくれた、多くの不調に効く“宝物”を見つけ、活かすこと」だと彼は述べています。

からだと心の調和:なぜ“内なるバランス”が大切なのか

クナイプにとって、身体と心の健康は切り離せないものでした。彼はさらに踏み込んで、多くの身体の不調は神経のバランスの乱れから始まるとさえ述べています。

だからこそ、負担がかかりすぎた神経を整え、その活力を保つためにも、心のバランスを見つけることが何より重要だと考えました。

そのための道は、仕事と暮らしのあいだに、できるだけ良いバランスを築くこと。19世紀初頭に語られたこの考え方は、まるで今日の “ワークライフバランス” の概念を先取りしているかのようです。

クナイプは、働き者の人々に向けて、自分の提唱する生活の教えを覚えておくよう勧めています。

それは、自分の持っている力(リソース)と求められること(負荷)のバランスを取るための手がかりとなり、人間に備わるあらゆる調整力――生物学的なもの、心理社会的なもの、そして精神的なもの――に目を配ることが大切だと説いています。

さらに、クナイプのホリスティック(全体的)なアプローチで重要なのが、食事療法に、十分な運動とリラックスできるケアを組み合わせること。その際、できる限り “やさしく、自然な方法” を選ぶようにと言っています。

気持ちを落ち着かせる方法として、定期的な入浴や水浴(シャワー療法)は、日々のスピードをゆるめる手軽な手段だと彼は考えていました。

体の健康とともに心の健康も得られた人はどれほどいることでしょう。

セバスチャン・クナイプ神父
Sebastian Kneipp

“生活の秩序”は、健やかさへの半分の道:バランスはこうして身につく

もちろん、いまの働き方は100年前とは比べものになりません。それでも、デジタル化・自己最適化・常時接続が当たり前の現代において、クナイプの生活の秩序を整える考え方は、むしろ以前より大きな意味を持つようになっています。

そのため近年、「マインドフルネス」「質の良い睡眠」「セルフケア」といった言葉が注目されているのも、不思議ではありません。

とはいえ——誰にでも当てはまる“ひとつの正解”はあるのでしょうか?

実際のところ、私たち人間は、生活の中に安定した“枠組み”があることで安心し、心の軸が整います。しかし、「心の健康とは何か?」と尋ねれば、答えは人によってさまざまです。

だからこそ欠かせないのは、自分の内なる声に耳を傾け、いまの自分が何を必要としているのかを意識して感じ取ること。

たとえば——休みの日に川辺を裸足で歩くのが好きでもいい。朝いちばんに、心をほぐすハーブティーを飲むのが日課でもいい。仕事終わりに瞑想するのも、週末にゆっくりお風呂につかるのも、すべてあなたの選択です。

どんな形であれ、“自分を大切にすること”こそが、あなたにとってのいちばん大切な責任なのです。

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